日本語の由来 一人称編

自分自身を指していう言葉には「わたし」「おれ」「ぼく」などがあります。

「わたし」は「わたくし」のくだけた言い方で「我(われ・わが)」が元だと考えられています。「わたくし(私)」はもともとは「おおやけ(公)」に対する個人を意味していましたが、中世以降になると一人称代名詞として用いられるようになりました。現在では、自分自身を指して言うときに使われる最も一般的な言葉として、男女ともに使われています。

「おれ」は「おのれ(己)」の略で、古くは二人称として目下の者をののしる際に使われていました。中世以降になると一人称として男女の区別なく用いられるようになり、現在では主に男性が普段の会話の中で自分のことを指す言葉として使われています。

男性が自分自身を指して言うときに使われる「ぼく」は、漢字で書くと「僕」となり、これはもともと男性の召使いのことを意味しています。古くは「やつがれ」と読み、相手に対してへりくだる意味で使われていました。

これを「ぼく」というようになったのは江戸時代の末頃からで、一説には吉田松陰が「天皇以外は対等である」との考えの下、一人称として「ぼく」を使ったと言われています。

幕末の志士たちも、自分を指す言葉として「ぼく」を盛んに用いていました。それが明治時代になると書生や学生、さらに男性全般に広がったようです。